Experimental

限りなくメモ帳に近い何か

PERSPECTIVE

 

Distant

――18:00

 仕事が終わり、俺は下北沢に足を向けた。友人がなにやら有名所のバンド(と言っても世間的にはマイナーだが)と対バンするらしい。その「有名所」とは、俺や友人が学生の頃にバンド活動に勤しみ、コピーしていたアーティストだ。当時からしたら全く手の届かないような世界にいる人だと思っていたが。

 ライブハウスに到着し、演奏はすでに始まっていたがライブハウス後方にあるバーで入場時にもらったドリンクチケットと酒を交換した。シャンディガフうまい。

 ともあれ学生時代にコピーしてたようなアーティストと対バンっていうのはなかなか感慨深い。俺や友人は大学の頃に同じ軽音楽サークルに所属していて、休日はスタジオでバンド練習をし、大学の講義がある平日はギターを背負って歩く。隙きあらばケースからギターを引っ張り出して練習する。そんな音楽漬けの生活だった。

 しかしそんな俺や彼らにも社会人になるタイミングがおとずれて、ひとり、またひとりと音楽を辞めていき、ゆるやかにモラトリアムは崩壊していった。結局大半の人間は音楽活動を辞めていったのだが、いまだにビシバシと音楽をやっている者も少ないながら、いる。今日はそんな数少ない音楽を辞めてない友人を見に下北沢まで来たのだ。

 演奏は始まっていたがまだ序盤で、それから数曲は聴けた。

 他のバンド等もあらかた見終わり、そのあと夕飯を食べていない事を思い出して、外のとある定食屋に入った。

 定食屋では、生姜焼きが美味かったとか、サラダにかける胡麻ドレがわりとこだわってて良かった、とか感想があるのだがそんなことどうでもよくて、今日は、(友人が)大学の頃コピーしていたバンドと対バン、というのが今日の個人的なホットトピックである。

 所詮他人の事ではあるけれど、それでも昔は遠くに感じていたものが気がつけば近い場所に存在するというのは、地道に歩いてきた結果なんだと思った。