ラッカは静かに虐殺されている
衝撃的な映画を見た。今まで見た映像作品のどれよりも現実へ思考がフィードバックされる。それはなぜかと言えば、その映画は、夢や妄想の類ではなくただただ現実だからだ。
これは市民ジャーナリスト集団〈RBSS〉とイスラム過激派組織〈ISIS〉の戦いの記録。
『ラッカは静かに虐殺されている』(ラッカはしずかにぎゃくさつされている、原題:City of Ghosts)は、ラッカの戦いにおけるシリアの市民ジャーナリストのグループRBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently、「ラッカは静かに虐殺されている」の意)についての2017年のアメリカ合衆国のドキュメンタリー映画。
〈映画『ラッカは静かに虐殺されている』予告編〉
本編を見る方は注意していただきたいが、これはフィクションではなく、実際に監督とジャーナリストが撮影したものを映画にしている。それを踏まえたうえで、人間の殺傷シーンが頻繁に出てくるので苦手な方は見ないほうが良い。フィクションではい。
活動を続けるうちにジャーナリスト集団の仲間が殺害されたり、ISISからの映像に、捕らえられた自分の父が写っており銃殺される映像もある。最後の方にRBSSのメンバーのひとりアジズがタバコを吸っているシーンで、そのときの体の震え(痙攣に近い)ような映像があり、いかに緊迫した状況下で活動をしているかが実感できる。
この作品を見ると、この時代の戦争の形が以前の世界大戦のような総力戦とは異なり、テロリズムとメディアによる戦争に移行していることが分かる。
ただこれが撮影された時期と現在では状況は変わっている。
現在はISISは壊滅状態にあり、基本的には、暴虐(言ってしまえば虐殺)による支配を押し進める独裁政権〈アサド政権〉と反体制派との内戦がある。そこにロシアのアサド政権側への支援や、世界の警察としてのアメリカの影響力の低下など色々と複雑に絡み合っている。
戦争の体験を後世に伝える…
とよく言ったりするが、戦争は、今この瞬間も続いている。